Google Cloud (GCP)で SaaS を構築するメリットとは?具体的な構築方法や導入事例まで一挙に紹介!
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本記事は、2021年11月17日に開催された Google の公式イベント「 SaaS サミット」において、 Google Cloud カスタマーエンジニアの岩成祐樹氏が講演された「なぜ Google Cloud で SaaS を構築するのか?」のレポート記事となります。
今回はプロダクト開発(主に SaaS プロダクト)に携わっている方々に向けて、幅広く Google Cloud (GCP)のトピックをご紹介し、 Google Cloud (GCP)で SaaS を構築するメリットや構築方法などをわかりやすくお伝えします。ぜひ最後までご覧ください。
なお、本記事内で使用している画像に関しては、 SaaS サミット「なぜ Google Cloud で SaaS を構築するのか?」を出典元として参照しております。
それでは、早速内容を見ていきましょう。
目次
Google Cloud (GCP)で SaaS を構築する理由と構築方法
国内におけるソフトウェア・ SaaS 市場の動向
まずは日本国内におけるソフトウェアや SaaS 市場の動向について触れておきます。
昨今ソフトウェア市場は継続して拡大傾向にあります。 COVID -19 の影響により、完全リモートワーク体制に切り替える企業が増加し、新たな働き方の実現に向けて SaaS の役割は大きくなっています。
以下、富士キメラ総研の調査結果です。2024年時点のソフトウェア市場規模は1兆円を超えると予測されており、その中でも SaaS の割合が半数以上を占めるとの試算が発表されています。
このように、ソフトウェアや SaaS の市場規模は非常に大きなものとなっていますが、 SaaS を構築するためのプラットフォームは多数存在しており、どのサービスが良いのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか?
SaaS 構築プラットフォームの選定基準
プラットフォームを選ぶための判断基準は多岐にわたりますが、例えば「スケーラブルなシステムを低コストで構築できるのか」という観点が挙げられます。ただし、これは表面的な考え方でしかなく、 SaaS 構築においては「その SaaS により自社のビジネスをいかに伸ばすことができるのか」という点が重要なポイントになります。
つまり、 SaaS を通じてユーザーに価値を届けることが大切になりますが、ここで以下4つの要素を意識する必要があります。
- Modernization
- Intelligence
- Co-innovation
- Go-To-Market
これらの要素をバランス良く提供しており、自社のビジネス成長に寄与する SaaS 構築プラットフォームを選ぶことが重要です。
Google Cloud (GCP)の優位性
Google Cloud (GCP)を SaaS 構築のプラットフォームとして使うことで、上記に挙げた4つの要素をすべてカバーすることが可能になります。 Google Cloud (GCP)はインフラをモダナイズし、データを元に付加価値を加えて、利用者が Google や Google Cloud (GCP)と共創し、 Go-To-Market を共に推進する環境を提供します。
つまり、 SaaS 構築に重要となる4つの要素について、 Google Cloud (GCP)はすべてを一気通貫で提供しているのです。このように、 Google Cloud (GCP)は SaaS ビジネスを全方位で支援する強力なクラウドプラットフォームであると言えます。
ここから先は、前述した4つの要素をさらに細分化しながら、 Google Cloud (GCP)を利用した SaaS 構築について、具体的な機能やメリット、構築方法などをご紹介します。
Modernization
Modernization はモダンなマルチテナントやマルチクラウドアーキテクチャにより、スケーラビリティや安定性、セキュリティを実現します。それでは、具体的な内容を見ていきましょう。
Google Cloud (GCP)の特徴
まずは Google Cloud (GCP)について簡単にご紹介します。 Google Cloud (GCP)はアプリケーションをシームレスに構築し、効率的な自動化やスケーリングを行うことができます。高いスケーラビリティを確保した Google のすべてのサービスと同じインフラを使用できる点が大きな魅力の一つとなっています。
また、 Google Cloud (GCP)はアプリケーション開発をスモールスタートできると同時に、仮にサービス規模が大きくなった場合でも同じアーキテクチャで運用できる点は、プラットフォームとしての Google Cloud (GCP)の強みであると言えます。
そして、 Modernization の文脈において、 Google Cloud (GCP)でクラウドネイティブなアプリケーションを構築していくためには、主に「 Kubernetes 」と「 Serverless 」の2つの選択肢が用意されています。それぞれ、 Kubernetes は自由度が高く、 Serverless はビジネスロジックにフォーカスできるという特徴があります。
Google Kubernetes Engine (GKE)
一つ目の選択肢である Kubernetes に関しては、 Google が提供するマネージドな Kubernetes サービスである Google Kubernetes Engine (GKE)を利用します。
Google Kubernetes Engine (GKE)はワンクリックで Kubernetes を構築でき、運用の手間を軽減するオートヒーリングやオートアップグレードなどの機能が搭載されています。ロギングやモニタリングなど Google Cloud (GCP)の各種サービスとネイティブに連携し、 SLA 設定や HIPAA 、 PCI-DSS などのセキュリティ基準にも準拠しています。
2021年、 Google Kubernetes Engine (GKE)では「 GKE Autopilot 」という新しい運用モードが追加され、 Google Kubernetes Engine (GKE)のベストプラクティスと推奨事項で最適化されたマネージドな Kubernetes を利用可能になりました。
GKE Autopilot に関しては、以下の記事で詳しくご紹介しています。
Google Kubernetes Engine ( GKE )の2021最新機能を一挙紹介!さらに便利で使いやすくアップデート?
Cloud Run
二つ目の選択肢である Serverless に関しては、 Google が提供するサーバーレスかつフルマネージドなコンテナ実行環境である Cloud Run を利用します。コンテナとは、 OS (オペレーティング・システム)上に「アプリケーション本体」「必要なライブラリ」「設定ファイル」などをひとまとめにしたものです。
本来、コンテナを扱うためには「 Kubernetes (オープンソースのコンテナオーケストレーションツール)」を学ぶ必要があり、学習するための時間やコストが発生してしまいます。単純にコンテナを扱うだけであれば Kubernetes がなくても問題ありませんが、オーケストレーション(設定や管理などの自動化)を行うためには Kubernetes の知識が必要不可欠です。
しかし、 Cloud Run を使えば、コンテナイメージを構築して Cloud Run の上に乗せるだけで、 Kubernetes が提供している様々な機能・強みを享受することができます。このように、コンテナを非常にシンプルに扱える点が Cloud Run の大きな魅力であると言えるでしょう。
Cloud Run に関しては、以下の記事で詳しくご紹介しています。
2021最新機能を搭載した Cloud Run で高次元なセキュリティ対策を実現!
Cloud Spanner
クラウドネイティブでコンテナを動かす基盤としては、ここまでご紹介した Google Kubernetes Engine (GKE) と Cloud Run の2つが Modernization に活用できる選択肢として挙げられますが、アプリケーションを動かすためにはデータベースも欠かせない要素の一つです。
Google Cloud (GCP)では、用途に応じて様々なデータベースが提供されていますが、今回は Cloud Spanner というサービスをご紹介します。 Cloud Spanner はリレーショナルデータベースの利点と非リレーショナルのスケーラビリティを組み合わせた、エンタープライズグレードのデータベースとなっています。
Cloud Spanner はフルマネージドで提供されているため、とても簡単に運用することができ、最大99.999% の高い可用性を誇ります。また、自動シャーディングが実装されており、容易にスケールインやスケールアウトを実行可能な点も大きな特徴です。
Cloud Spanner に関しては、以下の記事で詳しくご紹介しています。
Google のリレーショナルデータベース Cloud Spanner とは?概要、特徴、メリット、活用事例まで一挙に紹介!
Google Cloud (GCP)を活用した Modernization の事例
ヘルスケア事業を手掛ける Ubie 株式会社では、自社が展開する Web 問診システム「ユビー AI 問診」のビジネス拡大を実現するために、効率的な性能改善や機能改善を行い、顧客獲得にリソースを割く必要がありました。そのため、クラスターの維持管理や設定、モニタリングなどの管理タスクを削減し、 Google Kubernetes Engine (GKE)の環境を最適化することが求められていたのです。
そこで、同社が GKE Autopilot を採用した結果、インフラコストや運用コストを削減するとともに、サービス改善にリソースを集中できるようになりました。これによって、開発チームがより多くの時間をビジネスに投資できるようになり、組織全体の生産性向上を実現しました。
Intelligence
次に Intelligence の領域を見ていきましょう。ここでは、 Intelligence をさらに「ビジネスインテリジェンス」と「スマートな製品」の2つに細分化し、それぞれについて詳しく解説します。
ビジネスインテリジェンス
世界的なコンサルティングファームであるマッキンゼーの調査によると、アナリティクスが毎年世界市場に影響を及ぼす金額は15兆4,000億ドルに達すると言われており、ほぼすべての CEO は自社がデータおよび AI 主導の世界で競争していることを認識しています。
しかし、その一方でデータを「目に見える価値」に変換できずに苦戦している企業は数多く存在します。とある調査結果では、データを目に見える測定可能な価値へと具体化できている企業の割合は、全体の僅か32%だと言われています。つまり、約7割の企業がデータの本質的な価値を享受できていないのです。
このような課題に対して、 Google Cloud (GCP)では Google Data Platform という統一的なエコシステムを提供しています。 Google Data Platform の広範かつ豊富な一連の機能により、誰でも簡単にイノベーションを継続でき、自社が保有するデータを具体的な価値に変換できます。
実際、多くの企業が Google Data Platform を活用して、自社の生産性向上を実現しています。ここで、わかりやすく内容をイメージするために、株式会社ヤプリの Google Data Platform の導入事例を見てみましょう。
同社では、従来 Google アナリティクスを利用してデータ収集や分析を行なっていましたが、この方法だけでは同社が理想とするデータ活用は実現できませんでした。そのため、サードパーティツールに依存せずに、自社でコントロール可能な柔軟かつ高性能なデータ基盤が必要となっていました。
そこで、データパイプラインに BigQuery を活用してデータを蓄積し、 Looker による可視化で顧客データ活用を促進する Smart Analytics を採用したのです。また、データパイプラインの構築では Pub/Sub や Dataflow を活用することで、 BigQuery へリアルタイムにデータを収集し、エンドユーザーが状況に応じて見たい情報を確認できる柔軟な基盤を実現しています。
BigQuery や Looker に関しては、以下の記事で詳しくご紹介しています。
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スマートな製品
昨今、 AI 技術は目まぐるしいスピードで進化しており、業種を問わずに様々な会社で AI が活用されるようになりました。小売や医療、金融サービス、メディア、エンターテインメント、ゲーム、工業、製造、公共など、その活用シーンは多岐にわたります。
そして、 AI 活用において重要なことは「 AI をどのようにビジネスに組み込むのか」という点です。スピードやコスト、柔軟性などの観点から、自社の状況に合わせた AI 活用を検討し、最適なものを選択する必要があります。
Google Cloud (GCP)では、大きく分けて3つの AI プロダクトを提供しています。いずれも用途や目的に応じて使い分けが可能なため、適切なプロダクトを選ぶことで、 AI の導入効果を最大化できます。
自社サービスの改善改良に Google Cloud (GCP)の AI プロダクトを利用した事例として、名刺管理サービスを展開する Sansan 株式会社が挙げられます。
同社では、名刺を撮影してテキストデータ化する OCR のプロセスに Cloud Vision API を採用しました。1日あたり800万リクエストを処理する画像処理システムを Google Cloud (GCP)へ移行し、コストの削減とともに、エンドユーザー目線でも使いやすい環境を実現したのです。
3大パブリッククラウドの画像認識AIの比較をした記事もございますので、ご興味のある方はあわせてご覧ください。
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Co-innovation
Co-innovation の領域では、「 One Google 」と「エコシステム活用」の2つに分けて、詳しい内容をご紹介します。
One Google
One Google とは、 Google の幅広いプロダクトの協業による差別化です。 Google は多岐にわたるプロダクトを展開しており、様々なビジネスシーンにおいて活用できる機能やサービスが揃っています。
ただし、 Google はそれだけではなく、他のプロダクトエリアとの連携も積極的に行なっています。つまり、 Google がハブとなって、 Google Cloud (GCP)だけに閉じない新しい価値をお客様に提供できるのです。
エコシステム活用
Google Cloud (GCP)は、単にお客様のサービスをより良くするだけではなく、そのサービスをより多くの方々に届けるためのエコシステムとしての活用も可能となっています。具体的には、 BigQuery のテクノロジーを活用した Analytics Hub (Preview)で、貴重なデータ資産を安全に共有・マネタイズします。
Analytics Hub を活用することで、価値の高いデータと分析の資産を安全かつ効率的に交換するためのエコシステムを構築できます。これにより、組織の境界を越えて、安全でプライバシーが保護されたデータ共有と収益化を実現可能になります。
以下、 Analytics Hub を使用したデータエコシステムの構築を図でイメージしたものです。
Exchanges はデータの枠のようなものであり、今後あらゆる業界の様々なデータがこのエコシステムの中に集約されます。これらのデータを活用することで、自社の機械学習に役立てたり、保有しているデータを収益化したりできるプラットフォームとして利用可能になります。
Go-To-Market
Go-To-Market の領域では、「セールスチャネルの拡大」と「営業とマーケティングでの GTM 支援」の2つに分けて、詳しい内容をご紹介します。
セールスチャネルの拡大
Google Cloud (GCP)では Google Cloud Marketplace というものが提供されています。 Google Cloud Marketplace は Google Cloud (GCP) の管理コンソールで提供されているカタログサービスであり、従来は「 Cloud Launcher 」という名前で親しまれていましたが、2018年に「 Google Cloud Marketplace 」へ名称変更しました。
Google Cloud Marketplace では、 SaaS 型のサービスを掲載することもできるため、サービス開発者の目線では、 Google Cloud (GCP)のユーザーへ自社サービスを効率的に広めることが可能になります。また、 Google Cloud Marketplace に掲載されているサービスは Google からの請求に一本化できる点もメリットの一つだと言えます。
以下、 Google の公式ページに掲載されている情報です。
このように、自社サービスを Google Cloud Marketplace に掲載することで、世界中に存在する膨大な Google Cloud (GCP)ユーザーにリーチでき、効率的な Go-To-Market を実現できるわけです。
営業とマーケティングでの GTM 支援
Google では ISV Ignite Program というものが用意されており、金銭的な支援やパートナープログラムの支援などを提供しています。また、 Google がパートナー企業と連携し、 Google Cloud (GCP)とパートナーソリューションを組み合わせた価値訴求など、営業的な支援も行なっています。
このように、 Google は様々な形でパートナー企業と連携や協業を行い、パートナー企業が Go-To-Market を実現するための支援をワンストップで提供します。
ここで、 Google がパートナー企業と協業した具体的な事例をご紹介します。 株式会社パルはプレイド社が展開する CX プラットフォーム「 KARTE 」を利用していました。そして、この KARTE と Google Cloud (GCP)を連携することで、サービスの利便性がさらに向上し、組織全体の生産性向上に成功しました。
このように、 Google がパートナー企業と連携することで、これまでにはなかった新しい価値を生み出すことができます。これは Go-To-Market において非常に大切な要素であり、パートナー企業がビジネスをスケールする上で大きな意味を持つと言えるでしょう。
Google Cloud (GCP)に関する Q&A
Q . Cloud Run 、 GKE Autopilot 、 GKE Standard について、サービスの選び方を教えてください
A .組織として kubernetes を利用する場合は GKE Autopilot または GKE Standard が適しており、 kubernetes を利用しない場合は Cloud Run が適していると言えます。 kubernetes は様々なものを自由に構築できる反面、その作業工数や管理工数は大きくなる傾向にあるため、自社の状況に合わせて最適なサービスを選択することが大切です。
次に、 GKE Autopilot と GKE Standard のどちらを選ぶのか?という点については、まずは GKE Autopilot の利用を前提として検討を進めるのが良いと思います。これは、 GKE Autopilot の方が Kubernetes の運用をより簡単に行えるためです。
そして、 GKE Autopilot では対応できないシチュエーションが発生した場合は、 GKE Standard の利用を検討してください。
Q . Analytics Hub でデータを販売することはできますか?
A .2021年11月時点ではできません。今後のアップデートにご期待ください。
Q . Marketplace に自社サービスを掲載する基準はありますか?
A .具体的な基準については Google Cloud 公式ページをご参照ください。なお、個別に質問したい場合はこちらのフォームより Google 営業担当へお問い合わせをお願いします。
まとめ
今回は、幅広く Google Cloud (GCP)のトピックをご紹介し、 Google Cloud (GCP)で SaaS を構築するメリットなどをわかりやすくお伝えしました。
Google Cloud (GCP)は Modernization や Intelligence 、 Co-innovation など、あらゆるシーンにおいて、お客様のビジネスを力強く支援するソリューションとなっています。また、自社の SaaS 開発の効率化や生産性向上はもちろん、さらに広くビジネスを展開していくための Go-To-Market の領域までを広くカバーしており、 自社サービスを様々なユーザーにアプローチ可能になります。
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